2005年9月号88ページに掲載
▲扉に戻る

特集 総合エネルギー企業 九州電力

メキシコ・トゥクスパン5号機の建設工事も着々

着実な進展見せる海外 IPP(独立発電)事業

 総合エネルギー事業をコアに事業領域の拡大を目指す九州電力にとって、海外におけるIPP事業およびコンサルティング事業は新規事業開発の一翼を担う重要な事業部門である。2000年フィリピン・イリハンプロジェクトへの参画を皮切りに、メキシコ、ベトナムにおいてもIPP事業に着手しており、収益基盤の強化・拡大と国際貢献に寄与するまでになっている。

第一号海外案件は
フィリピン・イリハンIPP

 九州電力が、初めて海外事業に参画したのはフィリピン・イリハンにおけるIPP事業。イリハンは、マニラ市の南約150キロに位置する地区で、同国が所有するマランパヤ海底ガス田からパイプラインを通じてガスを供給、国産ガス燃料を使用する発電所としては国内最大となる出力120万キロワットの発電所を建設するという一大プロジェクトだった。
 IPP事業にあたって九電は、韓国電力や米国系電力会社のMAPL(ミラント・アジア・パシフィック)社、三菱商事との共同出資で、発電所を所有し運営する現地法人・KEILCO社を設立。KEILCO社は、国営のフィリピン電力公社(NPC)から燃料を調達、発電した電力をNPCに販売する。同社とNPCは、20年間の売買契約を結んでおり、契約期間終了後には施設をNPCに譲渡することになる。
 発電所の建設費約7億米ドルは、4社による出資のほか国際協力銀行、米国輸出入銀行、韓国輸出入銀行、市中銀行によるプロジェクト・ファイナンス方式で融資を受け、三菱重工業および米系大手建設会社・レイシオングループと建設契約を結んだ。着工は99年3月で、02年6月に運転開始した。
 同事業における九電の出資比率は全体の8%程度だが、「初の海外事業であるフィリピン・イリハンにおける成功は、当社のその後の海外事業展開の基礎になった」(海外事業部)と話している。

海外事業における
ノウハウを蓄積

 フィリピン・イリハンにおけるIPP事業で使われた事業スキームは、海外における電源開発では一般的に用いられる手法である。
 開発途上国においては、電源開発の必要性が認識されながら、巨額の投資資金と発電施設建設の期間、それになにより発電所を建設し運転していく技術的ノウハウが乏しいケースが多いが、そうした難点を解消するための手法として考案された同スキームを活用することで、発注者と事業者のリスク負担が大きく軽減されることから、90年代に入って海外IPP事業が注目され始めた。
 九州電力においても、電力自由化の波が押し寄せようとする中で、それへの対応と新たな収益基盤の強化・拡大が新たな経営課題となりつつあり、新規事業育成の一環として、さらには九電グループが保有する発電・送配電・土木などに関する経営資源を活用し国際貢献を果たすという観点からも、アジア地域における試行的な海外事業展開がタイムテーブルに乗りつつあった。
 そんな中で、フィリピンに次ぐ第2号案件となったのは、メキシコ・トゥクスパン2号IPP事業。
 基本的な事業スキームは、フィリピンのケースと同様で、メキシコ電力庁(CFE)と25年間の売電契約(契約終了後も所有権は移転しない)を結ぶ一方、国際協力銀行、市中銀行からプロジェクト・ファイナンス方式で融資を受けた。発電方式はガス・コンバインド・サイクルで出力は49万5000キロワット、建設資金は約3億米ドル。ただし、同事業において、九電は発電所を建設・運営する現地法人であるEAT社に30%を出資しており、技術的支援を受け持つなど関与の度合いが大きくなっているのが特徴。日本企業2社による事業は、それだけリスクを負うことになるわけだが、敢えてそれを引き受ける覚悟を示したところに、九電の海外事業に対する思い入れの強さがうかがえる。
 さらに、第3号案件となったベトナム・フーミー3号IPP事業では、英国石油メジャーのBP社、シンガポールの政府系企業であるセムコープ社と均等出資(九電は双日と共同)で事業に着手した。施設はガス・コンバインド・サイクルで出力約71万6800キロワット。01年12月に着工、04年3月に運転開始した。なお、フーミー3号は、同国で運転開始した外資による初のIPP事業であり、また約4億米ドルに上る資金のスムーズかつ迅速な調達に関して、欧州の金融専門誌から「アジアパシフィック・マルチソーシング・ディール・オブ・ザ・イヤー2003」を受賞した。
 「トゥクスパンでは30%を出資、技術面で多くの部分を受け持ち、またフーミーでは世界的企業と対等にプロジェクトを推進するという経験から多くのことを学ぶことができた」と海外事業部。
 ここでの成功が、メキシコ・トゥクスパン5号IPP事業につながっていく。

ハンズオンで発電所建設
トゥクスパン5号

 トゥクスパン5号IPP事業は、九電のこれまでの海外事業における集大成ともいうべき特別な事業である。
 同事業は、三菱商事との共同プロジェクトで、トゥクスパン2号発電所の隣接地に出力49万5000キロワットの発電所を建設するというもので、04年7月に着工、今年1月には敷地造成工事が完了し、現在はガスタービン、ボイラーなど主要機器の据付工事が進められている。現時点での進捗率は約55%で、来年3月の試運転、同年9月の営業運転開始を目指して、急ピッチで工事が進められているが、これまでの海外プロジェクトと異なるのは、九電が検討段階から主体的に参画している点。
松尾社長自ら立ち合った立柱式
 同プロジェクトの場合、03年11月にメキシコ電力庁が実施した競争入札に、当初段階からパートナーである三菱商事と参画。建設費約3億米ドルについても、国際協力銀行、市中銀行からのプロジェクトファイナンスで融資を受けるスキームを作り上げたほか、現地に12人の社員を派遣するなど、「工事の見積もりから建設、運営・メンテナンスまでハンズオンで行っている」。
 通常、海外IPP事業でこうしたハンズオン方式を採用するのは極めて稀だが、それによって「国内の新規建設工事が減少する中、技術を維持することと、安全性を最大限配慮しながらコストを削減し収益性を高めるというノウハウを蓄積することが可能になる」という。
 なお、今年7月に現地で行われた立柱式には、松尾新吾社長と小島順彦三菱商事社長も参加、現地スタッフの陣中見舞いにも訪れたが、海外事業の立柱式に九電トップが参加するのは今回が初めてで、その点からも同社の本プロジェクトに期す強い意気込みが感じられる。

アジア地域を中心に
IPP事業で国際貢献

 このように九州電力では、海外IPP事業に積極的に参画する一方で、工務・土木部を中心にコンサルティング業務も行っている。
 04年度だけを見ても、タイ地方電力公社の変電所建設に関するコンサルティングや台湾の航太変電所建設工事に関する技術コンサルティング、フィリピンにおけるシコポン水路式発電計画F/S調査など、グループ会社との共同実施を含め7件の実績を持つ。
 九電では、これまで4件のIPP事業に取り組み、国内で長年にわたって培ってきた発電所の建設・運営ノウハウを活用し海外における電力の安定供給に貢献するとももに、収益基盤の強化を図ってきたが、「今後もさらに、アジア地域を中心にメキシコ、北米などでの発電事業に積極的に参画していきたい」と話している。

▲扉に戻る
●ご意見・ご感想・情報提供はこちら
  (尚、無記名・連絡先のないメールは削除されます)