2005年5月号77ページに掲載


「利便性」「住環境」共に進化するマンション

住宅市場の回復基調は本物か?

積水ハウス グランドメゾンシリーズ
JR九州 MJRシリーズ
第一交通産業 アルデ グランドパレス
       アーバンパレスシリーズ
新栄住宅 アンピールマンションシリーズ
作州商事 EIR(エイル)マンションシリーズ
穴吹工務店 サーパスマンションシリーズ
なかやしき アーティックスシリーズ
タイヘイ サングレート、サンライフシリーズ
アーム・レポ アメックスシリーズ
アイランド リスタシリーズ
 「慎重なる漸進(ぜんしん)主義」(Cautious Gradualism)。いま、中央大手、地場を問わず、九州のマンション事業者に共通する経営戦略は某有力事業者のこんな言葉に集約されそうだ。一部に景気回復が伝えられ、九州ではマンションの売れ行きも好調な中で、住宅需要刺激策だった、住宅ローン減税の“恩恵”は希薄化。資材費や建設費などのコストアップも懸念される。それらの一方で、交通網が整備され、商業集積も拡大したことで、土地自体の価値と魅力は向上した。状況を危ぶみながらも、次代の可能性に向け、着実な前進を図れるか。まさに、マンション市場は、踊り場から正念場に移行しつつある。

市街地の地価は、下げ止まりマンション事業は「初め半分」

  九州 と山口・沖縄両県のマンション市場では、まさに「地殻変動」が起きている。国土交通省が発表した公示地価(2005年1月1日時点での土地の評価)によると、交通網の整備と商業集積の拡大により、地価の下げ止まりが広まったことが鮮明になった。
 とりわけ地価変動率の大きい都心部でみると、福岡市では地下鉄七隈線の開通や新地下街の開業で、商業地の下落率が8年連続で縮小。天神地区では2年連続の上昇に転じた。住宅地でも中心部で値下がりに歯止めがかかる(下落率は5.3%で、前年よりも1.4%改善)一方、郊外地は対前年比横ばいで、底入れ感が濃厚。
 九州新幹線(新八代駅−鹿児島中央駅)が発着する鹿児島市でも、7年ぶりで市街地圏に持ち直しの動きが見られた。
 ここで、多くのマンションデベロッパー(開発事業者)が異口同音に唱えるのが「初め半分」。すなわちマンションビジネスは、事業用地の仕入れ(初め)の段階で、すでに事業の成否の5割を決する。それ以降にどんな設備、仕様やデザインが物件に加味されても、やはり「緒戦が決戦」。
 その場所だけがもつ(1)利便性(2)交通条件(3)周辺環境が、最終的なマンションの魅力と価値、そして販売実績までを左右する。
 優良な土地の仕入れは、全デベロッパーにとっての死活問題といって少しも大げさではなく、事実、各社はこぞって事業好適地の購入に殺到。中央市街地を中心に優良な土地の購入レースは激化する一方だ。あまつさえ、メーンの購買層である30−40歳代の世帯層の都心回帰が伝えられる折り、である。ただし、土地の仕入れでは競合の激化と共に、入手を困難にしている要件を散見する。

家庭も企業も、都心に回帰進む、不動産の金融商品化

 利便性や住環境の向上は、不動産投資業界の食指も動かす。国内外の不動産ファンド事業者による賃貸マンションや商業ビルなどの獲得競争は、主戦場を東京、大阪などの大都市圏から地方都市に移しつつあるが、中でも福岡市の中心市街地は全国的に注目が熱い。
 いくら地価が下げ止まり傾向にあるといっても、まだ同市なら大都市圏に比べ地代も賃料も格段に安い。逆にこれまでの連続的な地価下落で、値ごろ感が高まった上、九州新幹線の開業効果もあり、中・南九州への日帰りビジネス出張もひんぱんになる。
 中央大手企業から地場中小企業まで、こぞって営業拠点や本社機能を同市に集中させるなど、企業の都心回帰も手伝い、不動産の利回りは上々という。不動産ファンド(基金)によるREIT(不動産投資信託)や私募ファンドなどの急増によって「不動産の金融商品化」が活発化している。  これらのあおりを受けて、マンション事業好適地は公有地、私有地を問わず、入札が導入されるようになり、人気地では20数社からの応札も珍しくない。どうしても一等地を競り落としたい、と競争が過熱すれば、オークションと同じで、いきおい落札価格はハネ上がり、中には路線価の2倍以上になるケースさえある、と聞く。こうした半面、新しい会計基準が、経営実態が思わしくない企業の土地放出を促している側面もある。

新会計ルールで土地が放出 ピンチとチャンスは混在へ

 減損会計では、土地や工場など企業が持つ固定資産の価値が簿価(帳簿上の価格)を5割以上に下回ったり、その資産の営業損益が3期連続で赤字になる場合、減損処理が求められており、ここで、市場に出回る土地が増えている。 新会計ルールは、06年3月期からはすべての上場企業に強制適用されるが、地場企業でも資産の処理を急ぐケースが目立つ。
 こうした一連の土地を巡る動きをどう読み、どんな手を打つか。デベロッパーの姿勢と主張は、「慎重選別派」と「積極投資派」に大別できる。その“主旋律”は、こんなトーンを帯びている。
 「土地は有限の資源。一部の一等地に群がり仕入れ競争に明け暮れて、未来市場の先食いに走るのではなく、将来性のある土地だけ厳選して購入するほうがベター。市場のボリュームも早晩、新築から既築リフォームにシフトすることまで見据えるのが賢明だ」
 「住宅ローン減税は05年以降、控除額が毎年縮小する方向。金利の先高感も漂う中、利便性、住環境ともに折り紙付きの物件が望めるのはこれが最後。必ず、駆け込需要が見込める。『土地を抑える者が、市場を制す』という業界の黄金率は、これからも変わらない」
 およそ、どんな事業でもピンチとチャンスは常時混在し、同時進行するものだが、目下のところマンション市場全体が前進していることは事実だ。

福岡が九州市場をリード 新「地価・住宅革命」の時代

 九州の新設住宅着工件数(04年)は対前年度比7.8%増の11万310戸で、2年連続で前年の実績をクリア。全国平均(2.5%増)と比べても、九州の好調ぶりは明快だ。うち、持ち家でも全国の0.8%ダウンに対して、逆に九州では0.5%アップ。特にマンションは23%の上昇で全国(5.8%増)を大幅に上回った。
 中でも福岡市は全九州の4割を占める一大市場だが、同市の発売戸数も対全年度比5%増の5345戸で、全国の伸び率(同3%増)を凌(しの)いだ。
 この背景には、都心部中心に第2次ベビーブーム世代や団塊ジュニア層が購入に走ったことや、両親と同居する2世代住宅がヒットしたことも大きく、郊外部でも住宅第1次取得者層が動いたもようだ。
 いずれにしても、バブル経済崩壊後の「失われた10年」を経て、新しい「地価・住宅革命」が起きていることは確実で、ここに中央大手から地場中堅まで、マンションデベロッパーは、どんな個性と魅力を発信する物件を提供するのか。以下のコーナーでは、その“主役”となる事業者に登場いただき、独自の事業コンセプトを語っていただこう。

●ご意見・ご感想・情報提供はこちら
  (尚、無記名・連絡先のないメールは削除されます)