2005年4月号145ページに掲載
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企業の採用担当者による座談会


牧野 功次郎氏
九州日本電気ソフトウェア 総務マネージャー

野中 純治氏
ヤマエ久野 人事部長

須田 和生氏
マックスバリュ九州
人事部長

「就職は社会的自立であり自己責任で生きていくこと」

 景気の好転に伴い、企業の業績が回復しつつある。それに伴い、採用再開や採用人員を増やすなど、新卒者にとって明るい兆しが見え始めている。だがこれまでと違い、採用は量から質へと変化してきており、内定が重複する学生とそうでない学生の2極化が進んでいるようだ。企業の命題ともいえる人材確保を担う人事担当者に、採用人員、採用のポイント、大学へ望むことなどを率直に話し合ってもらった。(ホテル日航福岡にて)

 −景気は回復傾向にあり、新卒者にとっても明るい兆しが見え始めています。まず各社の新卒者採用予定数、方法、基準などをお伺いしたいと思います。
 野中 今年4月採用の新卒者は総合職21人、一般職24人の合計45人ですが、来年もほぼ同数を採用することになると思います。バブル期は60人ほど採用したこともありましたが、それ以外はほぼ同数で推移しています。
 牧野 当社は親会社のNECとの調整中で確定はしていませんが、来年は30人程度を採用したいと考えています。特にここ数年は採用数を抑えてきましたが、事業規模は年々拡大しており、新たな人材の確保が急務となっています。
 須田 イオングループである当社は今年15人ほど採用しました。今後も九州各地に出店を見込んでおり、来年は同数かそれ以上の採用を計画しています。この厳しい時代に成長している企業ですので、優秀な人材に来てほしいと思っています。
 牧野 それにしてもヤマエ久野さんは学生の人気が高いですね。
 野中 おかげさまで、毎年多くの学生が受験します。当社の場合、総合職と一般職を募集しますが、総合職は採用数の60倍、約1200人が応募してきます。また一般職は20倍のおよそ400人です。入社試験はまず志望者全員に能力検定試験を行い、ガイドラインを超えた者だけが次の1次面接へと進みます。そして1次合格者が2次の役員面接となります。
 当社の採用基準をひと言で言うと「品がよくてやんちゃな人」。品がいいことが最低の条件となります。しかしそれだけでは駄目で、仕事をすればやんちゃでなければいけません。1次面接は部長クラスが担当しますが、面接官には「あなたが部下にしたいと思う人を採用しなさい」と言っています。自分が部下にしたくない人は、ほかの部署でも決して使いたくないはずです。ですから部下にしたいと思ったら合格です。しかも面接官に能力検定試験の結果は一切教えません。あくまで人間性重視です。点数を教えてしまうと、どうしても点数の高い順に決めてしまうようです。以前は点数の順番で採用したこともありましたが、高得点=優秀な人材とは決してならないようです。

 須田 なかなかユニークな採用方法で、大変参考になります。
 当社は創業4年目の新しい会社なので、まだまだ知名度が低く、学生にアピール不足の感は否めませんが、会社の業態や将来性などを会社説明会やインターネットなどを通じ、積極的に行っています。
 試験は適性検査後、部長クラスの1次面接、次に役員面接となりますが、あくまで人物重視で、採用のポイントはまず「商売が好きかどうか」です。商品やサービスを通じてお客さまと触れ合っていく訳ですから、そういうことをやりながら自分を伸ばしていきたいと思う人を採用しています。もう一つは競争の激しい業界ですので、当然、環境変化も激しい。それに対し柔軟な考え方で対応できる人が望ましいですね。
 牧野 当社も同じく面接重視で、1次は部長クラスで、2次は社長と役員が担当します。面接ではその人が学生時代に何をやってきたかを丁寧に聞くようにしています。自分自身の生の経験を語ってもらうことで、物事に取り組む時のその人の考え方や努力の過程を知りたいと思っています。あくまでオーソドックスな質問が主で、奇をてらった質問はほとんどありません(笑い)。
 また採用においてはミスマッチをなくすことに最大の努力をはらっています。まず志望者には選考を受ける前に必ず本社に来て説明会に参加してもらいます。その中で、仕事をしている現場に案内し、職場環境を実際に見てもらいます。また、若手エンジニアの生の体験を聞かせます。ともすればエンジニアといえばスマートなイメージでとらえがちですが、現実は知力と体力勝負の世界です。先輩から実際の失敗談や苦労話を聞くことで、自分たちが進もうとしている仕事の厳しさを実感できるようです。おかげでここ3年以内に採用した新入社員で離職した者はほとんどおらず、高い定着率となっています。
 野中 当社は試験が終わり合否が決まると、採用予定者全員に電話で「合格です」と伝えます。「合格」と「内定」の違いは、合格とは4月1日にヤマエ久野に入社する権利を与えるということです。大学入試と同じで、行く行かないは自由で、入社する権利と辞退する権利の両方を持っているということです。つまりどちらの権利を行使しても構わない。そのために1カ月間の猶予期間を与え、この間に「イエス」「ノー」の連絡をくださいと伝えます。
 須田 この間、学生は教授や先輩、親御さんや就職課などと相談し、入社の意思を固めるのでしょうね。

 野中 そうだと思います。こちらからおいでおいでは一切しませんし、自分を見直し、決意を固めるのにいい期間だと思います。その場では有頂天になってますから、すぐ返事をしたがるのですが、こういった人ほど、後から断る場合が多いですよ。
 −最近は大学を卒業しても定職につかないケースがよく見られます。また就職するにしても、地元指向が非常に強く、転勤のない企業を選ぶ場合が多いようです。
 牧野 親元にいれば、フリーターでも十分食べていける時代ですから。しかし就職に対してしっかりした考えを持った学生は大勢います。就職に熱心な学生と意欲のない学生と両極端で、2極化しているようですね。当社のような技術系はもともと学校推薦などが多かったのですが、最近は理系の学生でも自ら積極的に各企業を回り、自分をアピールしています。半面、どうしても就職に向き合えない学生も増えているようです。
 須田 当社は九州各地に店舗があるので、転勤は当然あります。また新店舗が出来ると、それに伴って人が異動しますから他業種に比べると短期間での転勤も多い方だと思います。また本人は転勤は一向に構わないのに、親の反対で採用を辞退するケースもあり残念です。当社の場合、転勤といっても九州内ですから、思い切って飛び込んできてほしいと思います。
 野中 親が反対するのは女子学生に多いようです。私は学内セミナーなどで、あなたたちは必ず親の承諾を得て、納得して来てください、と言うようにしています。
 私は学生たちに「就職とは社会的自立である。社会的自立とは親の保護から脱却して、自己の責任で生きていくこと」と必ず言います。今はあなた方は親の保護下にあるが、就職することにより社会的に自立するんだよ。一人で食べていくことが就職なんだよと。その意識を強く持ってほしいと思います。
 牧野 当社は約850人の社員がいますが、そのうちの約1割が東京勤務です。当社を希望される学生の中には、福岡で働けると思って受験される学生もいるようですが、東京や九州各県に拠点がありますから、転勤は当然あります。面接をしていると学生の口から「社会貢献」「地元貢献」という言葉が出てきますが、よくよく聞くと、なんだ福岡で仕事がしたいのか、となる場合もありますね(笑い)。
 当社は福岡に本社があるということで、地元の優秀な学生たちに人気があることは非常にありがたいのですが、より高度なプロジェクトを体験したり、最新IT技術を身に付けたりするために東京でも働いてみたいという学生にきてもらいたいですね。
 −各社の新入社員教育、研修などはどのようなものですか。
 野中 当社で有名なのは自衛隊への体験入隊と120キロ行軍です。行軍は1日40キロ、3日間歩きますが、これらは入社案内の資料にも明記しており、絶対に逃れられません。26年にわたる伝統行事です。毎年、研修が終わった後に感想を聞くと、全員が行軍は絶対続けるべきとの意見です。やりとげた満足感と、自分たちで終わってたまるか、という二つの気持ちでしょう(笑い)。

 牧野 当社は先ほどもお話したように、ここ数年非常に高い定着率を維持しています。これは入社前の情報提供、新入社員教育、配属先を決定する時の配慮などがうまくいっているからだと思います。
 なかでも新入社員教育は当社のアピールポイントの一つです。当社の新入社員教育の様子をホームページに掲載していますが、これは教育期間中に新入社員が作ったものです。また毎年、10月に行う内定式では、社長、役員、事業部長と一緒に懇親会を行います。その中で会社の方針、将来像などをざっくばらんに情報交換できるような機会を持つほか、どういう仲間と仕事をするのか。自分が馴染めるのかといったことをしっかり確認してもらいます。さらに内定式以降、情報処理技術者試験向けの通信教育を全員に受講してもらいます。こうして入社した後は、3カ月間みっちりシステムエンジニアとして最低限必要なスキルを身につけさせた上で各職場に配属し、そこで実戦を積んでもらいます。
 須田 当社は内定者には内定者通信の配布や懇談会で1日も早く社会人としての意識を持たせるように努めています。また新入社員研修は3泊4日で行い、企業理念、基礎知識をはじめお客さまへの接客、あいさつなど小売業としての基本を徹底的に学びます。さらに半年後には再度研修を行い、これまで現場で体験した成功例や失敗例、問題点や改善点などを互いに話し合います。もちろん教育は徹底的に行いますが、小売業は現場でお客さまと触れ合う中でしか感じ得ない点も多く、現場が最高の教育という感もあります。
 −以前は採用するにあたり、指定校制やゼミ指定などもありましたが、現在はいかがですか。
 野中 今はほとんどないと思います。
 牧野 会社の中で成果をあげている者が一流大学出身かというと必ずしもそうではありませんね。
 須田 全く同感です。一番大切なのは仕事に対する情熱、研究心、仕事が本当に好きかどうかだと思います。
 野中 当社は毎年約120大学から受験に来ます。現在、在籍者の出身大学は109あります。たった1人の大学もあれば100人以上の大学もあり、しかも北海道から沖縄まで幅広くいます。大学は結果であり、あくまで人物ですよ。よく情報誌の調査などで、出身校別構成を記入してくれと頼まれるのですが、私どもは絶対に提出しません。指定校制なし、としか書きません。
 牧野 当社は結果的には内定者の中で国・公立大学出身者が8割以上になりましたが、私立大学出身者も多くいます。大学名だけで門前払いではせっかくのいい人材を見つけるチャンスを逃すことになります。
 野中  当社はそのために試験で基準点を設けているのですから、有名大学出身者の80点と、そうでない大学出身者の80点も同じです。
 牧野 確かに有名大学の方が基礎学力の面からいうと安心感はあります。ですがそれは最初の入り口の段階にすぎません。面接重視ということは人間的要素を見るということであり、大学のブランドとは必ずしも一致しないと思います。ただし、基礎学力試験で大学の偏差値が反映しているきらいはありますね。
 須田 大学を見ているというより、基礎学力を見ているのですね。小売業においては、お客さまの反応を敏感に感じ取り、それをすぐに実行に移すことができるかどうかは学力とはあまり関係ないようです。
 牧野 九州の国立大学出身者でも面接の選考過程で落ちる学生はたくさんいますから、大学のブランドは後からついてくるものでしょう。
 野中 逆に国・公立の学生の方が面接はへたですよ。そういう指導を受けてませんね。最近は国・公立も独立行政法人になり受験生に選ばれる側になりましたから、かなり真剣になられていますが。
 須田 最近は理系においても、ただ研究だけしているのではなく、文系の要素を持った技術者養成に力を入れていますね。
 牧野 システムエンジニアの場合、IT知識だけでは仕事はできません。官公庁や民需といった幅広い層のお客さまに対応するにはコミュニケーション能力も必要になってきます。システム開発はハード、ソフトの提供だけでなく、お客さまの業務課題を解決するためのソリューションを提供することになりますので、お客さまの仕事を正確に理解する能力も必要になります。
 −以前と比べ学生の気質が変化していると思います。学生に望むことは何でしょう。
 牧野 学生に関しては、好感が持てる点と物足りない点の両方があります。好感が持てる点は、以前に比べると、今の学生は非常に自己啓発意欲が高いと思います。勉強とかサークル活動に力を入れているし、インターンシップや海外留学、学外活動に意欲的にチャレンジしているように思います。またキャリア志向が強くなり、一生この会社で働こうという気持ちよりも、自分の専門性を高めてくれる会社を値踏みした上で入社する学生が増えていると思います。
 次に物足りない点は、面接対策をしてきているせいか、面接するとみんな同じような答えしか返ってこないことです。特に最近の傾向として、志望理由として社会貢献とか地元貢献などがキーワードになっているようです。それ自体は構わないのですが、その裏にある自分の思い、情熱、気持ちなどを伝えられる学生が減っています。あふれる情報や一般論を鵜呑みにしているのかもしれません。
 須田 自分のやってきたことや考えをきちんと話せる人には魅力を感じますね。面接訓練の丸暗記や付け焼き刃でものを言ってもすぐに分かってしまいます。最近は事前の企業研究はほとんどがインターネットですからその範囲でしか知らないですね。以前は飛び込みで会社訪問したり先輩に会ったり自分の目で確かめる行動が多かったように思います。自分の就職ですから、自分で確かめたことは入社してからも必ず役に立つはずです。まして小売業の場合、大勢のお客さまに対しさまざまな提案を次々に打ち出さなくてはいけません。自分で考え、自分で行動する。そういった事前の活動をもう少し掘り下げてほしいと思います。

 野中 私はまず自分で考え、自分の意見をはっきり言える力をつけてほしいと思います。以前、こんなことがありました。追加募集をするために、ある大学に推薦の依頼をしたところ、学生がやってきたので志望動機を尋ねると「就職課の指示で来ました」と。履歴書も持ってきていないし、これまで就職活動も全くやっていない。あなたの意思は一体どこにあるの、と言いたいですよ。また大学の就職課も模擬面接で言葉遣いをきちんと教育すべきです。集団面接の際、リラックスしていいですよとこちらが砕けて言うと、すぐに友達言葉になって話す学生もいます。それを自分では不思議とも何とも思っていない。自分では会話が盛り上がってよかったと思っているのに、採用されなくて、なぜ落ちたのだろうと(笑い)。また最終面接の会場で社長以下が待っているのに、何の連絡もしてこない学生もいました。こういった学生は社会人になっても、平気で約束をすっぽかし、連絡もしない人間になってしまいます。
 牧野 新卒は中途採用とは違い、即戦力ではありません。したがって5年後、10年後に期待した人材に育つ可能性のある学生を採用するわけです。学生のころは教えられたものを詰め込めばいいわけですが、社会人は何をどのように学び、学んだものをどのように活用するのかなどを全部自分で考える必要があります。いわば受身のティーチングから自律的に学ぶラーニングに学ぶ姿勢を変えていってほしいですね。
 コミュニケーション能力は絶対に不可欠ですが、これは会社に入ってからでは遅すぎますし、大学時代までにぜひとも身につけてほしいと思います。
 −最後に大学への要望をひと言お願いします。
 野中 民間企業と同じく先生方に人事考課をすべきですね。学生の出席率や学生の評価などを取り入れて。私は理事長自らが教室で受講してどんな授業が行われているか確かめるべきだと思うのです。そうすれば実態がよく分かると思います。時代は間違いなく変化しているのですから、先生方も変わらなければ、大学は生き残っていけないでしょう。
 牧野 確かに大学も成果主義を取り入れるべきだと考えます。生徒の満足度、理解度などから先生を評価し、競争原理の中からいい先生が残っていくというのが大学の質を高める一つの方法だと思います。
 須田 企業間では激しい淘汰が行われ、生き残るのに懸命です。大学においても意識改革、実務改革をしないと、今後、大学間での合併や吸収といったことが起きるでしょう。幸い大学トップや職員の方はそれに気づきつつあるようですが、問題は先生方です。今さら考え方を変えるのは難しいかもしれませんが、先生方の意識を変えることが最重要と考えます。
 ―本日はどうもありがとうございました。

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