2005年3号134ページに掲載
▲扉に戻る

特集 人材派遣

渡邊清俊・日本人材派遣協会九州地域協議会会長


基幹産業の製造へも進出

 人材派遣においては昨年3月、「改正・労働者派遣法」が施行され、派遣に関する規制がさまざまな点で緩和されたが、その中でも特に業界の発展にとって大きかったのが、製造業への派遣解禁。
 それまでは認められていなかった自動車や家電といった工場ラインの組み立て業務などに、派遣人材を送り出すことが可能となり、経営側からすれば、その時々の生産量の増減などに合わせ、必要な時に必要な能力を持つ人員を、必要な人数だけ確保することが、派遣人材によってもできるようになった。「非常に大きなマーケット市場であり、製造という日本の発展の一翼を担ってきた基幹産業へも進出」(渡邊清俊・日本人材派遣協会九州地域協議会会長)することとなった。
 この規制緩和については、日本の雇用構造の変化に合わせるように順次実施され、まず1986年に労働者派遣法が施行。専門性の高い16業務に限って、期限制限付きでの派遣が認められた。その後、派遣対象の業務は26にまで拡大し、99年12月には港湾運送、建築、警備、医療、製造を除いて原則自由化。その製造業への派遣も昨年解禁された。

 また、建設業に関連して今年に入って政府は、建設業者間での労働者派遣を可能とする、建設労働者雇用改善法改正案を通常国会に提出し、今秋から導入したい考えを示している。
 受注が少ない時期に余剰となった社員を、他の建設業者の忙しい現場へ派遣することができるようにするもので、実施されれば各都道府県の建設業協会などが主体となり、同一の建設業協会の加盟企業間に限って派遣が認められるが、まだ建設業以外の業者が派遣をすることはできない。
 「日本でも人材派遣に関する規制緩和が進んできてはいるが、アメリカのように規制が完全になくなるのが私たちの大きな望みであり、最終目標」(同氏)である。

機動性に富んだ企業へ

 こうした完全撤廃という最終的な課題も残ってはいるが、これまでの規制緩和でマーケットが広がってきたことも手伝って、人材派遣の市場規模は年々拡大の一途をたどっており、02年度の売上高は対前年度比15.5%増の2兆2472億円、人材派遣労働者数の方も同じく21.8%増の約213万人と大幅に増加している。

 そしてこの背景にあるのが日本の各企業が特にバブル崩壊以降、景気低迷や競争の激化などに打ち勝っていくため、一段と経営の効率化を図るとともに、環境の変化にいち早く対応できる柔軟な組織へと転換を進めてきたこと。これらを実現する経営手段として、派遣人材を活用する動きが目立ちはじめ、正社員を核としながらも、仕事の中身や役割によってそれぞれに合わせた雇用形態を導入。機動性に富んだ企業へと生まれ変わることを目指した。
 「以前は日本の企業において終身雇用が当たり前だったので、そういった意味では派遣社員も正社員の補完的な立場の色合いが強かったが、現在では企業の完全な戦力の一員として活躍している」(同氏)状況であり、今や企業からは、核となる人材としても求められている。

福利厚生、教育に注力

 そこで急がれるのが、派遣社員が安心して力を発揮できる、法制度をはじめとした環境の整備。アメリカの1980年代の不況は、人材派遣ビジネスが救ったと言われているが、それもきちんと確立された国の派遣に関する法律があってこそのもので、日本では急成長を遂げた分野ということもあり、まだその面が遅れている。
 「私たち派遣元の企業では、派遣スタッフの労働条件や福利厚生の向上に常に努めいる」(同氏)と言うように、各派遣元企業では自助努力によってその向上を図っており、健康保険、厚生年金、雇用保険といった社会保険への加入もその1つ。保険料は労働者と会社で折半して負担し、会社側にとっても売上高に占める負担額が大きくなっているが、力を入れて取り組んでいる。
 また一方で注力しているのが派遣スタッフへの教育。社会人としてのマナーから情報管理などに至るまで、きちんと教育した上で送り出している。専門性の高い分野では、例えばIT関係で1人の教育費に1カ月で100万円くらいかかったりするが、それも負担して高度なスキルを身に付けさせている。

紹介予定派遣も増加

 人材派遣でこのところ増加してきているのが、紹介予定派遣。これは将来の社員採用を前提に、派遣先が一定期間、労働者を派遣スタッフとして受け入れ、働いてもらった後、派遣スタッフと派遣先が合意すれば、直接雇用ができるシステム。
 求人企業は人材派遣会社に希望の人材を依頼するだけでよく、募集・試験・面接といった採用業務の手間を省くことができる。いわばこれまで企業が募集・採用活動において負担していた労力やコストの大部分を、人材派遣会社が代行することとなり、人事部門のアウトソーシング化を実現させたもの。
 また、一定の派遣期間を設けることで、面接だけでは把握しにくかった本人の能力や適正が判断でき、企業側からすれば求める人材を確度を上げて得ることができるようになり、今後ますますこの紹介予定派遣は増えていくものと思われる。
 これからの日本にとって大きな問題となっているのが少子高齢化社会の到来。労働業界全般への深刻な労働力不足が懸念されているが、それを救う1つの手段として期待されているのが、人材派遣による高齢者や主婦などの社会への再進出。「例えば主婦の場合は家事などがあり、就業の時間が制限されるケースも多いが、その点派遣の仕事ではさまざまな職種があって、就業時間の自由度が高いので、就業するのにはうってつけの業態」(同氏)。人材派遣が将来の日本の発展の1つのカギを握っている。


▲扉に戻る
●ご意見・ご感想・情報提供はこちら
  (尚、無記名・連絡先のないメールは削除されます)