2004年3月号59ページに掲載

KYUSHU & OKINAWA HOTELS 2004

癒やしと寛ぎの空間へ 問われるホテル“真価”論

ハウスウエディングの勢力拡大で福岡ブライダルは競争激化

■グランド・ハイアット・福岡 ■ホテルオークラ福岡 ■ホテルニューオータニ博多 ■シーホークホテル&リゾート ■弓張の丘ホテル ■城山観光ホテル ■いわさきホテルズ ■カヌチャリゾート ■ホテル日航福岡 ■ホテル日航熊本 ■ホテルステーションプラザ ■福岡山の上ホテル ■フェニックス・シーガイア・リゾート ■宮交ホテルズ ■沖縄ハーバービューホテル ■ロワジールホテルオキナワ ■グランドオーシャン ■雲仙新湯ホテル
 シティーホテルの役割が変化している。かつては、都市における最高級の空間として、情報の交換や文化の発信拠点としての役割を担ってきた。これに加えて近年は、利用者に非日常を提供する場として、また、都会の中の寛ぎの空間としてのニーズが増している。それだけに、充実したハードと洗練されたサービスはもちろん、他ホテルと差別化する具体化策確立の重要性が高まっている。個性や独自性を増しながら、各シティーホテルは存在価値を高めている。

激化する顧客争奪戦 福岡は棲み分け進行

 シティーホテルにとって大きな収益源である宿泊部門。九州では福岡を皮切りに、ビジネスホテルなどの宿泊特化型ホテルの進出による宿泊料金の低価格化が進行した。この「ビジネスホテルの台頭と低価格競争の激化」は地域ごとに様相が異なり始めている。
 ビジネスホテルとのボーダレス化が一段落した感があるのが福岡都市圏。現在も割引料金を設定するホテルは多いが、「ビジネスホテル利用者の獲得を狙った異常とも言える低料金設定は少なくなっている」(福岡市ホテル支配人)。割引方法も、インターネット予約や当日予約といった一部に絞るなど、多くのホテルが客室稼働率重視型から収益重視型へとシフトしている。例えば、グランド・ハイアット・福岡は、宿泊料金の一律1000円増に踏み切ったが、これは「ハイアット・ブランドにふさわしい質の高いサービスを提供すれば、利用者の指示は得ることが可能」(西川克志支配人)という判断によるもの。その意味では、利用者の棲み分けが進んだと言える。
 また、「シティーホテルでしか提供できない空間の提供」(ホテルニューオータニ博多・原口政博支配人)など、客室の居住性を重視するホテルが増えているのも特徴だ。各ホテルが重視するのは“癒やし”や“くつろぎ”。現在、客室の改修を進めるホテルニューオータニ博多は、「居住性やくつろぎを追求した癒やしの空間」(同)をテーマとする。今年で創業15周年を迎えるホテル日航福岡も「装置産業である以上、時代のニーズにあった客室への改装の必要性は強く感じている」(吉富芳助企画室次長)と語る。5大陸をイメージした客室を持つシーホークホテル&リゾートも「過去の概念にとらわれず、安らぎを感じてもらえる空間への改装を進める方針」(島津三郎接客本部長)という。
 一方「福岡ほど明確にシティーホテルと呼べるホテルは存在しない」(長崎のホテル関係者)他の都市では、現在も双方の顧客争奪戦が続く。そこには、宿泊部門を大きく左右する要素である観光客の動向が深く関与している。

観光産業低迷が影響し苦戦が続く長崎と宮崎

 観光部門が県経済の牽引役を果たしている沖縄県。イラク戦争や新型肺炎(SARS)などの影響による国内観光への需要シフトや全国的な沖縄ブーム、航空路線の拡充、大型コンベンションの開催といった追い風を受けて、03年は観光客数が510万人を突破。同県は04年観光客数を525万人と予測するなど勢いは止まりそうもない。この影響から各ホテルはいずれも宿泊部門の数字を伸ばしている。特にリゾートホテルの中には、売上高20%超というホテルも登場したほどだ。05年1月に開業予定の国内初の大型免税店など新たな集客要因もある一方、「ホテルの受け入れ態勢が十分に整っているとは言い難い」(県内ホテル関係者)との声もあり、効果を一過性に終わらせない業界を挙げた対策が求められている。
 NHKの連続テレビ小説「まんてん」(02年9月30日〜03年3月)やスカイマークエアラインズの就航(02年4月18日)効果で観光客数を伸ばした鹿児島は、今年3月13日の九州新幹線部分開業が観光客数にどのような影響を及ぼすのか注目される。
 一方、観光客減少に伴う影響が最も深刻なのが、沖縄と同様に観光部門が県の主要産業である長崎県だ。今年6月には長崎市内2つのホテルが閉鎖したほか、閉鎖・売却の動きがあるとされる。昨年夏に全国高校総体が開かれたものの、修学旅行数の大幅な減少や微減が続く宿泊観光客が要因となっている。特に修学旅行は、沖縄や北海道など国内の他の都市へとシフトしており、観光都市・長崎にとっては頭の痛い問題が続く。
 また、02年の県外観光客が6年連続減少、12年ぶりに500万人を割った宮崎も苦戦が続く。あるホテル関係者は「宿泊客の減少が経営にボディーブローのように効いている」と表現する。県は新たな観光ルートの創設や韓国など海外への働きかけを進めるが、重要なマーケットに据える香港は中国本土志向が強まり、台湾は北海道ブームが続くなど今後も苦戦が予想される。ただ、今年9月から始まる朝のNHK連続テレビ小説は「たまゆら」以来、39年ぶりに宮崎が舞台。同番組は新婚ブーム、リゾート地としての起爆剤となっただけに、新番組には観光浮揚への期待が高まっている。

ブライダル“福岡の陣”勃発も冷静なホテル陣営

 シティーホテルにとって宴会、宿泊部門と並ぶ収益の柱がブライダル部門。地方都市では、「レストランウエディングなど近年、注目を集めるスタイルも増えているが、中心は婚礼付帯施設を持つホテルと婚礼専門会場の争いという構図に大きな変化はない」(宮崎のホテル関係者)。あるブライダル情報誌が行った披露宴の実施会場に関する調査でも、ホテルが約5割、専門式場が約25%と続く。
 一方、福岡都市圏は九州内で特異な状況下にある。その大きな要因となっているのが、03年夏ごろから進出が目立ち始めたハウスウエディング業者の市場参入だ。この動きは現在も相次ぎ、今では「20業者は下らない」(福岡市ホテル関係者)という。
 その中には、「プール&ガーデン付き大邸宅の完全貸し切り」というスタイルが東京で話題を呼んだ「アーフェリーク迎賓館」、「独立型チャペルと趣の異なるガーデン付き3つの邸宅」が注目を集める「パルティーレ福岡ウエディングビレッジ」など、「ハード面の魅 力が高い」施設も多い。また、宅島建設(長崎県小浜町、宅島壽雄社長)の子会社が福岡市の第三セクターから買収した商業施設「マリゾン」も、「海に近いというロケーションから婚礼施設となる可能性も高い」と見られている。02年8月に西福岡マリーナに開業したエバーグリーンマリノアホテル、03年6月福岡市中心部に開業したモントレー福岡など、同部門に長けたノウハウを持つ勢力と併せて、ブライダル件数年間9000組とも言われる福岡市場は、「ブライダル“福岡の陣”とも言える状況にある」(ホテル関係者)。
 福岡都市圏のブライダル市場は競争激化の一途をたどっているように見える。あるホテル幹部は、「最低でも15%程度はシティーホテルの婚礼件数がハウスウエディングへと流れる」という厳しい見通しを示す。一方で、「ハウスウエディングのブームは一過性のもの」との理由から、ホテル関係者の大勢が「無視できないが驚異ではない」とみている。
 関西のホテルで勤務経験を持つホテル幹部は、「ハウスウエディングの流行は長くて3年。急速に市場を拡大した関東や関西でも、今は勝ち組と負け組が鮮明化している。今は、市場未開拓の地・福岡へと業者がシフトしているだけで、いずれ同じ道をたどるだろう」と分析する。また、「シティーホテルはあらゆるブライダルシーンに対応できることも強み」だ。多くのホテルがレストランやハウスウエディング対策ともいえるハードの改善を行い実績を伸ばしている点が大きい。「挙式時のサービスの質や婚礼前後を通じての特典などホテルの総合力」が新興勢力への強力な武器になるという認識が強まっていることも要因と思われる。
 ブライダル部門はハード面の充実ぶりを前提にした、商品企画力や開発力、挙式時の料理やサービスの質といったソフト面重視型へと完全に移行している。それは同時に、ホテル間でも同部門の優勝劣敗が一層、鮮明化することを意味している。

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