2003年10月号16ページに掲載

九州の県民性


 博多時間、肥後もっこす、などと、お国ぶりや気質を表す言葉がある。これらは血液型の性格判断と同じく、はたして真実を言い当てているのだろうか。そのような疑問に答えるのが、県民性の違いを興味深く探った岩中祥史著の『出身県でわかる人の性格』(草思社)。なるほど、とうなづく指摘がある半面、どうかな?と思えるものも混在している。ときあたかも頭のてっぺんを尖らせた、はなわ青年のベースの弾き語り『佐賀県』が大ブレイク。おかげで、これまで佐賀県出身を隠していた人たちが、続々名乗りを挙げ始めたという。そこで同書を紐解き、九州各県の県民性を探ってみたい。
 まずは佐賀から。かつて佐賀は九州7県のうち、最後まで名前が出てこない県、と言われた。しかしいま、はなわ効果で、最も笑顔で迎えられるのが佐賀県人のようだ。その県民性が「血圧が高くカッとなりやすい」とは穏やかでない。岩中氏は、明治新政府の司法卿まで務めた江藤新平が征韓論に敗れて帰郷し、維新政府に対して起こした佐賀の乱を挙げ、準備もろくにせず決起し、あっさり鎮圧されたことや、五・一五事件や二・二六事件の首謀者に佐賀出身者が多かったこと。さらに、高血圧疾患による死亡者数が全国で一番多いことを指摘する。佐賀の名誉のために付け加えると「佐賀モンが歩いたあとは草も生えん」等の揶揄は、隣の福岡県人が意図的にあげつらったもの、と擁護している。
 福岡県人はといえば、九州各県を見下すような態度は、他の県より進んでいると錯覚しているのではないかと警鐘を鳴らし、もっと広い視野を持て、と辛口の注文をつける長崎県人は、あくせくを嫌い、趣味を楽しむ。そして伝統を重んじ倫理観が強く、好奇心旺盛な国際派都会人、と誉める。NHKの県民意識調査で「天皇は尊敬すべき存在」と考えている人が全国で2番目だったことや、「昔からあるしきたりは尊重すべきだと思う」人が全国一多いという。さらに「家庭生活では、一人一人が好きなことをして過ごすよりも、一家団欒を大切にしたい」と考える人も全国一。倫理観念がとても強く、「うそをつくことは許せない」「賭け事は悪いことだ」「お金が人を堕落させる」と考える人が全国平均よりかなり多く、刑法犯、窃盗犯の件数は全国最低らしい。
 熊本県人は、オレがオレが、と出しゃばり、情にもろく義理堅い。そして頑固一徹なようでいて迎合的。「肥後もっこす」は豪放磊落という印象を与えるわりには肝っ玉は案外小さく、強いものにはあっさり迎合するのは、粘りに欠けるからという。福岡県へのライバル意識は強く、熊襲、田舎のイメージをひきずっているのは損、と指摘している。
 大分県人は、九州の中で地味な県であることは認めつつも、佐賀県だけには負けたくない、というのが共通した思いだという。大分県は徳川幕府以来、11の小藩に分かれ、明治維新まで改易や移封がなく、殿様が全く変わらなかったため、藩どうしの交流もなく、対抗意識ばかりが高かった。大分でよく聞く言葉に「赤猫根性」というのがあり、これは、ケチでがめつく利己的。足を引っ張り合うばかりで協調性がない、という意味。だからこそ張り合って一村一品運動が功を奏した、という指摘はどんなものだろうか。
 宮崎県は、おとなしくて消極的。あきらめが早く、なりゆきまかせ、だという。この気風は毎年のように来襲する台風の影響によるもので、いつしかそれに対処することを放棄するようになった。これを日向ボケというか、お人よしというか、いずれにせよ万事おっくうがる「よだき」が、県民性という。
 鹿児島はどうか。九州のなかでも非常に異質な県で、極端な男尊女卑、言葉、風物、西郷隆盛崇拝、など際立った特徴が。鎌倉時代から一貫して島津家の支配下にあり、維新後の廃藩置県後も1藩が1県になったのは高知とここだけ。理屈よりも行動、お世辞が言えず無愛想なので政治家や官僚には不向き、というのは欠点ばかりとは言えまい。
 あえて辛口批評を抜すいしてみた。人間、自分のことが一番わからないし、本当のことを指摘されれば腹が立つもの。さて、あなたの県の評価に、感想はいかがなものだろうか。真一郎

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