2002年11月号104ページに掲載

長崎特集・・・県 央

充実した住環境を模索

長崎の工業団地として存在価値を高めつつ


大村市の工業団地「大村ハイテクパーク」と「オフィスパーク大村」
<小見出し>

県内有数の工業エリア諌早・大村

諫早中核工業団地
 大村・諌早市を中心とする県央エリアは年間300万人を超える観光客が訪れ、長崎県が分類する県内10観光ブロックでは佐世保市、島原半島、長崎市・長崎半島に次ぐ第4位の観光客数を誇る。しかし、同エリアは観光地というよりも“長崎の工業団地”という色彩が濃く、観光県・長崎にあってやや趣が異なる。
 それは、例えば諌早市の場合、古くから長崎、佐世保、島原、佐賀への交通の要衝として重要な役割を担ってきた経緯があり、隣接する大村市は長崎空港を抱えるなど同エリアが交通ネットワークの拠点となっているためだ。こういった条件を背景に同エリアは先端技術産業の集積をめざす「高度技術産業集積地域」の中心となっている。
 県内での工業団地造成による企業誘致の成功事例として挙げられる諌早市の場合、諌早中核工業団地が77年11月に用地造成工事に着手、85年3月に完成し92年には完売している。市街地の西方5キロの丘陵地にある101ヘクタールの土地には、ソニー、三菱重工業といった有力企業を筆頭に、現在147社の企業が立地し144社が操業している。業種としては製造業が68社(全企業の46.3%)、卸売り・小売業、飲食店が30社(同20.4%)、サービス業が26社(同17.7%)など恵まれた交通アクセスが高い進出要因となる業種が多く進出している。
 さらに、同団地内にはソフトウエア人材の育成・確保を目的とする「長崎ソフトウエアセンター」や、同センターを核とした企業誘致の推進を図る「ナガサキBVL」、情報処理関連技術社の育成を目的とした「いさはやコンピュータ・カレッジ」が立地し、産業の高度化・近代化に対応しうる施設がそろっている。
 89年には工業製造品出荷額が佐世保市を上回り、長崎市に次ぐ額となった。通商産業大臣官房調査統計部による「工業統計表・市町村編」(平成12年)では、同出荷額は約2174億円と佐世保市とは500億円近い差がある。県工業の主翼を担うという役割は一層、重要性を増していることから、同市では新たな工業団地の造成の検討にも入っているようだ。 <小見出し>

起業しやすさ第1位の大村市

今年6月に商法上の本店所在地を大村市に移転した「コマツ電子金属」
 大村市の場合、84年7月に分譲を開始した工業団地「大村ハイテクパーク」には、半導体ウエハー製造のコマツ電子金属など、県内外から9社が進出している。同団地内には、さまざまな技術サービスの提供と機器の開放を行っている「工業技術センター」、ベンチャー企業を支援する「産業振興財団」、新技術・新工法・新素材の研究や建設資財の適正な品質管理を行う「建設技術研究センター」など県の施設も入居している。
 また、隣接する土地には事務所や研究所、工場などといった施設の立地と定住化を目的とした「オフィスパーク大村」がある。同団地内の進出企業への支援を目的に市などが出資する第三セクター「アルカディア大村」は、企業育成のために賃貸工場を建設しているが、今年9月に3社の進出が決定し、10月からは2社が操業を開始するなど成果が徐々に表れている。
 さらに、県都・長崎と北の拠点都市・佐世保市とのほぼ中間に位置するという交通の利便性から、県内物流の中枢としての役割も高まっている。例えば、ヤマト運輸が県の物流拠点をつくったり、シャープが長崎・佐世保の両営業所を統合して大村市内に長崎支店を開設したというのもその例といえる。やや古いデータになるが東洋経済が99年7月に実施した調査で大村市は、起業しやすさで全国第1位、総人口や工場従事者数、工業製造品出荷額などからはじき出した成長力では全国第4位と高い評価を得ている。
市内に緑が多く残る諫早市
 同工業団地の高い評価は立地条件や充実した機能集積だけではないようだ。前述したコマツ電子金属は、同社として初の一貫工場をハイテクパーク内に開設したが、立地協定の締結にあたり移転候補地として全国700カ所をリストアップ。その後、8県28カ所にまで絞り込んだ末、行政上の支援や各種優遇措置を勘案して大村市に決定した。今年の6月末に一部の技術機能だけを神奈川県平塚市に残して商法上の本店所在地を同地へと移転した。その理由について同社総務部は「九州内の半導体工場とのアクセスの容易さと人材・水量が豊富なことに加え、県と市の熱意が一貫して変わらなかったため」と説明する。 <小見出し>

長崎一住みよい街へ定住化を促進

国指定重要文化財、諫早公園内にある「眼鏡橋」
 諌早・大村両市に対する高い評価の一つに「住みやすさ」というのがある。現在、人口が減少傾向にある長崎県にあって、住民基本台帳によれば諌早市の人口は01年が9万4070人で前年比0.4%増。同様に大村市は8万5699人で同1.2%増と純増している。その要因としては、県都・長崎市やその周辺部に比べて開発が遅れたことから地価が相対的に安いことがあげられる。諌早市のように、振興住宅地を整備して定住化促進策を積極的に進めていることも人口増の大きな要因といえる。
 さらに両市はともに「市内に緑が多い」ことを住みやすさの理由にあげる。「観光資源が少ないとは言うが、市内の至る所には歴史的な遺産や史跡が存外に多い」という発言もあるように、諌早市の眼鏡橋、大村市の城下町としての風情が今も残るまち並み、両市にまたがって今も残る旧長崎街道など、散策しながら親しめる名所が数多く残る。自然と歴史、文化がうまく融合している点も住みよさの理由の一つかもしれない。
 さらに、諌早市は文久3年(1863年)から続く名物料理うなぎがある。また市は、すっぽん料理を同市の新しい名物にと考えているという。というのも、長崎県はすっぽんの出荷量が第1位。その中心が諌早市と隣接する森山町で、町内には単体の業者としても全国第2位の出荷量を誇る養殖業者があるという。大村市では福岡県を中心としたバスツアー客など日帰り客が増加していることからも「大村市と連携して新しいルートを創出し、域内観光の目玉商品にしたい」(諫早市商政観光課)という。 <小見出し>

長崎観光の今を映し出す長崎空港

日本初の海上空港として75年に開港した長崎空港
 県央エリアを語るうえで長崎・空の玄関口である長崎空港は欠かせない。75年5月に日本初の海上空港として開港した同空港には現在、東京線が1日12便、伊丹線が6便、関西線が2便など、国内線12路線40便、国際線が上海線とソウル線の2路線が就航している。
 乗降客数は96年まで右肩上がりで伸びていたが、翌97年からは減少が続いており、01年度で約285万人が利用している。その要因として同空港内施設や設備を運営・管理する長崎空港ビルディングの高田勇社長は、東京 −福岡線や沖縄線、札幌線など、いわゆる幹線航空路線の乗客が伸びている点を指摘しながら、「長引く景気低迷が影響して観光旅行の『安・近・短』傾向が顕著となっていることに加えて、利用者の利便性向上が未成熟」な点を挙げる。その上で「長崎観光の復興を誘発するには便数の拡大が必須条件であり今後の検討課題」とする。
 一方で、県民の共有財産である長崎空港をより身近に感じてもらうだけでなく、既存の航空路線網の充実を図る対策は進んでいる。その一つが長崎空港ファンクラブの募集だ。九州では同空港だけ、全国的にも珍しい取り組みで、利用回数に応じた店舗利用券や旅行券などの進呈、モニターツアーへの派遣といった特典がある。入会金、会費は無料で01年10月から募集を開始し、会員数は約1万人にのぼっている。さらに、同空港内店舗の店員は全員が同社の社員で「よりレベルの高いサービスを均一に提供できる体制となっているのも特徴」(高田社長)だ。
 長崎空港が県内観光の現状を映し出す鏡であることは疑いようがない。観光県・長崎の顔として、今後の長崎空港の一層の活性化と利用促進が期待される。

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