2002年4月号128ページに掲載

【high technology】東レ

炭素繊維“トレカ”で強化した鉄道高架用防音壁を商品



コンクリートはく落問題

 鉄道構造物にはコンクリート材料が使われているケースが多いが、経年劣化によりはく落が発生する場合がある。最近の例では山陽新幹線のトンネル内で起きたはく落が記憶に新しいところである。こうしたコンクリートの劣化対策として鉄道事業者は、はく落防止の危険予知のための定期的な打音点検や、表面補修工法で対応しているが、現状では抜本的な問題解決には至っていない。
“トレカ”を使った鉄道高架用防音壁の施工例。右は施工前

 東レが“トレカ”を使った鉄道高架用防音壁(高欄)の開発を始めたのは、大手電鉄会社から開発依頼があった2年前。要求性能は“耐久性”“軽量化”およびコンクリートと同等以上の性能だった。依頼を受けた同社は“トレカ”の優位性である「軽量化」「耐久性」などの付加価値と、施工まで含めたトータルでのコストは既存材料に対抗可能と判断。同社独自の設計技術と一体成形法を駆使して、“トレカ”の「軽くて」「強くて」「さびない」という優位性を製品に最大限に発揮させ、はく落問題のない、超軽量で薄型、かつ優れた防音性能のあるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics=炭素繊維強化プラスチックス)製高欄の 商品化を実現、大手電鉄会社でのスペックインに成功した。

CFRP製高欄の特徴と経済的効果

 このCFRP製高欄はコンクリート製に比べ重量は約1/10(25キログラム/平方メートル)、 厚さは約1/2〜1/3(55ミリメートル)と超軽量で薄型。この軽量化による経済効果は大きく、既存の劣化したコンクリート高欄を取り換えるケースでは、クレーンなど重機を使わず人力による高欄の設置と昼間施工が可能となるため、従来の工法に比べて約50%の総工費削減が期待できる。また、防音性能を向上するために高欄を増設するケースでは、軽量化効果により高架橋下部に対する荷重が少なく、防音壁のかさ上げが容易にできる。
 昨今、新聞誌上で騒音問題が取り上げられているが、CFRP製高欄は騒音対策用高欄としても有効な商品といえる。さらに都市整備の一貫として鉄道が高架化されるケースが増えているが、コンクリート製高欄の1/2〜1/3程度の薄さで必要な強度と防音性能を実現しているこの高欄は、高架橋全幅の縮小効果が大きいと共に意匠性の自由度が高いので、都市部、郊外部それぞれの景観に相応したデザインにも対応でき、従来の防音壁のイメージを一変させた。

着実に広がる市場での評価

 同社は昨年10月、先の大手電鉄会社と共同で取り換え工事のデモを実施し、この高欄の商品性を実証した。会場には全国の鉄道関係会社15社、総勢66人が出席し、この高欄を使った新工法に高い関心を示した。そしてデモ工事を契機に問い合わせが多数あり、複数の試験施工も決まり、市場での評価は高い。
 東レのCFRP製高欄は、鉄とコンクリートを用いる従来の土木建築材料の諸問題を解決した、まさに次世代型鉄道構造材と言える。なお、当該商品の基本性能は大手電鉄会社の実施工で確認済みだが、どのような道路や鉄道用防音壁に対しても、使用される状況に応じて独自な設計と個別対応が可能である。
 同社は今後全国の鉄道事業者向けにCFRP製高欄の販売を拡大し、2005年には売上高100億円を目標に事業展開していく方針である。
東レ株式会社 九州支店 〒810-0062 福岡市中央区荒戸1-1-3
TEL 092-771-7571
FAX 092-714-5376
URL http://www.toray.co.jp

●ご意見・ご感想・情報提供はこちら
  (尚、無記名・連絡先のないメールは削除されます)