2002年4月号99ページに掲載

【人吉・球磨レポ】
 進むさらなる魅力ある地域づくり

観光資源の宝庫
“人吉・球磨”

関連記事  ●球磨焼酎●サンロード●峰の露酒造



 熊本県の最南端に位置し、国見岳、市房山を主峰とする九州山地のりょう線で鹿児島・宮崎両県と接す人吉・球磨地方。鎌倉時代初期から明治時代に至る700年、37代の長きにわたって相良氏一族が治め、豊かな自然に恵まれた山紫水明の城下町でもある。その長期統治ゆえの、歴史的にも文化的にも貴重な史跡や文化財が至る所に点在、市街地には今なお古都のたたずまいを色濃く残し、「九州の小京都」とも呼ばれている。また、日本3大急流の1つに数えられる球磨川が市の中心部を東西に貫流、球磨川下りはあまりにも有名である。随所にわき出る温泉、球磨焼酎も同地を代表する顔の1つで、 これだけの財産をさらに生かすべく、人吉・球磨では今、官民挙げてより魅力ある地域づくりに取り組んでいる。

自然、史跡、文化財、温泉…

福永浩介市長
 「15年前の就任以来、市民のみなさんに常々強調しているのは、この人吉・球磨に自信と誇りと愛情を持とうということ。これだけ地域としてのいろいろな財産に恵まれている所はそうなく、大いに胸を張っていいと思う。今後はさらにこの財産、地域特性の魅力をいかに引き出していくかだろう」(福永浩介・人吉市長)。「まだまだ宝の持ち腐れの面が多い。文化財1つをとっても九州でもトップクラスの質と量を有しており、それもまだPRなど十分生かしきれているとは言えない」(岩下高矢・人吉商工会議所会頭)と官民とも地元の資源については絶対的な自信を持っている。
 そしてその自信が示す通り、九州の他の地域がうらやむような、実際いろんな面での魅力的な資源であふれている。まずは豊かな自然。四方を雄大な九州山地に囲まれ、それら山岳から発した水系が、南方から鳩胸川、北方から山田川、万江川などの支流となって合流し、最上川、富士川とともに日本3大急流の1つである球磨川水系を形成、市の東西を貫流している。清流にしか生息しない鮎がいる川として全国的にも有名で、それを見てもいかに自然に恵まれた所かがうかがいしれるが、鮎釣りシーズンになると国内各地からつめかけたファンでにぎわっている。
 もちろん球磨川下りが観光の大きな目玉。人吉城跡対岸の人吉発船場から渡までの清流コースと、球磨村渡発船場から球泉洞までの急流コースがあり、奇岩怪石を眺めながら48瀬あるとされる激流の中を下るスリル満点の川下りである。船頭の巧みな櫓さばきで乗り切るこの急流下りは「世界一のウォーターシュート」とも言われているが、近年はゴムボートで下るラフティングがより自然との一体感が味わえてエキサイティングと、若者を中心に人気を集めている。
 歴史的、文化的な資産も豊富である。相良氏700年の栄枯盛衰の歴史を物語るかのように、多くの寺院や史跡、文化財が今日に伝えられ、寺院や建物の中には鎌倉や室町期に建立された由緒あるものが数多く、各所に国宝級のものがずらりと顔をそろえている。代表的なものとしては806年に創建、桃山風の豪壮な建築様式で、人吉・球磨地方最大の神社でもある「青井阿蘇神社」(人吉市)や生善院観音堂(水上村)、城泉寺(湯前町)、青蓮寺(多良木町)、王宮神社(多良木町)、十島菅原神社(相良村)、山田大王神社(山江村)など、いずれも国指定重要文化財である。
 その他にも相良家菩提寺の願成寺(人吉市)、大きな岩石をくり抜いた山門が目印の石水寺(人吉市)、幽霊の掛け軸で知られる永国寺(人吉市)などをはじめ、名刹が目白押しである。また相良路を巡ると聖観音、十一面観音、千手観音、如意輪観音、馬頭観音、准堤観音といった観音像を祭った33カ所の観音霊場もある。
 旅ごころを十分満たしてくれるのが随所にわき出る温泉。球磨川に沿って約50の泉源が点在し、清流のせせらぎをわきにしながら、軟らかな泉質の温泉にゆっくりと身をゆだねることができる。室町時代のころからわき出していたと伝えられているが、本格的には明治43年に50度の温泉掘削に成功したのが始まりで、大正、昭和とその数を増やしていった。

資源を結びつけて魅力アップ

岩下 高矢会頭
 こういったさまざまな観光資源を、より魅力ある形になるよう結びつけようと、近年はソフト面に知恵が絞られている。「観光客全体に占める割合が増加している女性、あるいはご年配にもっと来ていただけるようなソフト、企画を打ち出していきたい。それには現場の第一線でお客さまのいろいろな声を直接耳にしている女将や、柔軟な発想ができる若い人たちの意見をどんどん取り入れたい」(有村隆徳・人吉旅館組合会長、グランドホテル鮎里社長)と積極的。今年3年目になる地域挙げての「人吉・球磨ひなまつり」は女将たちで構成する「さくら会」から出てきたアイデアで、年々広がりを見せている。
 「1年、2年といった目先だけの取り組みに終始するのではなく、当然10年先、20年先を見据えた地域づくりが必要。それには行政、民間、市民とともに域内の各地がさらに一体化した取り組みをしていくことがポイントになる。一度にやることはできないので、やれるところから少しずつでも進めていきたい」(岩下会頭)と将来にわたる構想も描いている。「例えば桜、つつじ、あじさい、もみじといった四季折々の花を、市民からの寄付やボランティア活動で、人吉・球磨の自然にマッチした形で植樹していくこと。球磨川べりに延々と続く桜並木なども1つのアイデア」(岩下会頭)。
 「観光は景気に左右される面がかなりあるので、そちらばかりにウエートを置くのではなく、普段からのさまざまな形での交流も大切」(福永市長)と観光任せだけではない、人の交流にも力を入れている。平成11年、人吉市出身の“打撃の神様”、元巨人軍監督の川上哲治氏の協力を得た川上哲治記念球場・記念館が落成。これも「少年野球大会の開催など、ここを少年野球のメッカにしたい」(福永市長)との思いを込めたものである。また一方では、郷土が生んだ偉人を通して今一度、ふるさとの風土、歴史、文化などを見つめ直し、21世紀に何をなし、何を残していくべきかを考える機会になればと、「郷土の偉人館」を構想している。

中心市街地の活性化に市庁舎の移転を検討

●人吉・球磨地方のイベント

2 / 上旬〜2 /中旬 にしき植木市(錦町)
2 / 上旬〜3 /下旬 多良木町ひなまつり(多良木町)
2 / 中旬〜3 /上旬 人吉梅まつり(人吉市)
2 / 下旬(2日間) 新春えびす市(多良木町)
2 / 3〜3/24 人吉・球磨ひなまつり(人吉・球磨一円)
3 / 4(旧暦) 柴立姫神社祭(球磨村)
3 / 下旬〜4 /上旬 湯山温泉桜まつり(水上村)
4 / 上旬 上村さくらまつり(上村)
4 / 上旬 チューリップ祭(免田町)
4 / 上旬 桜まつり(上村)
4 / 中旬 つつじフェスタinやまえ(山江村)
4 / 中旬 森と花のコンサート(球磨村)
4 / 29 ゆのまえグリーンパレスつつじまつり(湯前町)
5 / 第2(土・日) 人吉温泉球磨焼酎まつり(人吉市)
5 / 下旬 人吉市大畑梅園梅狩り(人吉市)
6 / 上旬 自然ホタル観察(相良村)
6 / 上旬 はなしょうぶ祭り(深田村)
6 / 17(旧暦) 鵜口観音祭(球磨村)
7 / 下旬 布の滝夏祭り(人吉市)
7〜8 /中旬 えびす夜市
8 / 上旬 人吉市鹿目の滝まつり(人吉市)
7 / 下旬〜8 /上旬 さがらっぱ祭り(相良村)
8 / 上旬 夏まつり(湯前町)
8 / 上旬 よかまつり(上村)
8 / 上旬 深田村だんだんな夏祭り(深田村)
8 / 上旬 おどんが祭(免田町)
8 / 中旬 山江夏まつり(山江村)
8 / 15日 人吉花火大会(人吉市)
8 / 中旬 えびす夏祭り[盆踊り・納涼花火大会](多良木町)
8 / 中旬 ふるさとよけまん祭り(岡原村)
8 / 第3(土・日) 九州ハイランドMTB記念大会in五木(五木村)
8 / 下旬 錦夏祭り
8 / 下旬 球磨川マラソン大会(須恵村)
8 / 下旬 日本一の大鮎釣り選手権大会(球磨村)
9 / 15 一の宮神社大祭(水上村)
9 / 20〜9 / 26 相良三十三観音めぐり(人吉・球磨一円)
9 / 23 白水神社大祭(水上村)
9 / 下旬 球磨川舟唄全国大会(人吉市)
9 / 下旬 フルーツレディースマラソン大会(錦町)
9 / 下旬 相良路サイクルフェスタ(錦町)
9 / 下旬 やまえくり健康マラソン(山江村)
10 / 8〜11 人吉おくんち祭り(人吉市)
10 / 20〜21 多良木町ふるさと恵比寿祭り2002(多良町)
10 / 中旬 市房山登山マラソン大会(水上村)
10 / 下旬 人吉・球磨総合美展(人吉市)
10 / 下旬 全日本選抜剣道七段選手権大会(錦町)
10 / 30 霧島神社大祭(岡原村)
10 / 下旬 ふれまいまつりくまむら(球磨村)
11 / 上旬 にしきまちふるさと祭り(錦町)
11 / 第1(土・日) 五木の子守唄祭(五木村)
11 / 中旬 人吉市産業健康福祉まつり(人吉市)
11 / 中旬 ゆのまえ漫画フェスタ2002(湯前町)
11 / 15 里宮神社秋季大祭(湯前町)
11 / 中旬 産業振興祭り(山江村)
12 / 上旬 歳末たすけあい演芸会(人吉市)
 豊富な観光資源がより魅力あるものへと変わりつつある中、中心市街地の活性化についてもある試みが検討されている。「商店街の方でテナントビルを建設し、人吉市役所もそのテナントの1つとして入居する」(福永市長)というもので、実現すれば全国でも初めてのケースとなる。人吉城跡に隣接している現庁舎は、国の重要指定文化財の範囲内に建てられており、以前より国から移転の要請を受けている。庁舎の老朽化が進んでいることもあり移転問題は課題の1つだったが、郊外への移転ではなく、中心街の活性化も狙って、今回の方式を検討することにした。既に昨年12月、市議会内に「市庁舎移転に関する特別委員会」が発足し協議を重ねているが、市庁舎の移転には市議会議員の3分の2以上の同意が必要であり、初めてのケースとなるその成り行きに、今後全国からも注目が集まりそうである。
 「湯布院などたくさんの観光客でにぎわっているが、観光資源そのもののバラエティさでは、明らかにこちらの方が上回っているだろう。あとは市民一体となっていかに取り組み、いかに魅力アップしていくか」(岩下会頭)。人吉・球磨はさらなる魅力ある地域へと進化中である。
関連記事はこちら
●球磨焼酎
●サンロード
●峰の露酒造

●ご意見・ご感想・情報提供はこちら
  (尚、無記名・連絡先のないメールは削除されます)